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02 郷に入りては…

LA SECONDA PUNTATA  "PAESE CHE VAI, USANZA CHE TROVI"

第2話 郷に入りては…

今朝、いつものように職場に向かうために
トラムの8番(CASALETTOと LARGO ARGENTINA とを結ぶ路面電車)に
揺られていると、中国人母子がトラムから降りていく様子が見えた。
街中で東洋人を見るのは好きだ。お仲間意識 かな?

ところでその母さん、降りる時に、
持っていた黒い折り畳みの傘をガバッ と広げて差していった。

イタリアで雨に降られた方はご存知かと思うが、
街角では雨が降り出すとバングラディシュ人の男性たちが
すかさずわわっと傘売りに群がってくる。彼らが売ってるあの傘。
あの5ユーロの傘をその母さんは広げていたのだ。

でも今日のローマ、雨など決して降ってはいなかった。カンカン照り。
そう、でもわたしには分かる。東洋人は日傘を差すのだー

その後、トラム内に残された人々は、戸惑いを隠せなかった。
一番前に座っていた女性などは大きく身を乗り出して
“Piove?(ピオーヴェ?=雨降ってんの? )”とのたまった。

彼女だけではない。それを見てしまった全ての人が、
遠ざかっていく中国人母子の後ろ姿をちらりちらりと見ていた。
ひょこひょこして見ている人もいた。
何が起きたのか、誰か説明してくれー 、というような表情の男性もいた。
若い出勤途中の女性の多い朝の車両では、
残念ながらイタリア特有の「ちょっと何あれ奥さん」、
「変よねー」的なざわめきは聞こえず、
見て見ぬ振り率が高かったのであるが、
確かにみんな思っていた。「なんじゃアレ?」

ここまで書けばお分かりだろう。
イタリア人は、いや、西洋人は(かな?)日傘なんぞ差さない。
まぶしけりゃサングラスをかける。
太陽の光?当たらにゃソンソン。
だって傘は雨の時に差すんだもの。
日傘ってのはビーチ・パラソルだけを言うんだ。

わたしは東洋人だから、この中国人女性の行動の意味が分かる。
紫外線はオハダに悪いから日傘で防いでいるのだ。
太陽光アレルギーなのかもしれない。

しかしここはイタリアだ。日傘なんぞ差さない。
みんながみんな「へっ?!」と思うのだ。
「雨降ってんのかよ」と一瞬ドキッとさせるのだ。
帽子をかぶればいいではないか。
クリームを塗ったくればいいではないか。
外に出なけりゃいいではないか。

それか背中に「これは日傘です」と貼り紙をして歩き回って欲しい。
この話をこうして本日のお題につなげたいのであるが、
もうちょっと分かり易くするために別のエピソードを挙げよう。

数週間前、ホテルに日本人カップルがお泊まり下さった。
新婚旅行だったが、かわいそうなことに奥様の体調が悪く、
3日目には旦那様が体温計を求めにわたしのところへ来られた。
そんなこんなで、同僚たちにも一通りの事情を説明した。
しかし同僚たちはみんなどこかで
「東洋人が体調が悪い?ヤバイぜ」と思っていたのだろう。
世はSARSの報道大全盛

そして、10年前から3年ほどローマにお住まいだった経験があるという
そのお客様、奥様は、同僚どもの不安に拍車をかけてしまった。
マスク をしてフロントに現れたのだ。

ルームメイク(CAMERIERA=カメリエーラ)のアンナは
「マミ!!!あのマスクはいったい何の意味?まさかアレってこと?」とわめき散らし、
ビビりまくっていた。
泊めている側の同僚はもちろんだが、
他の宿泊客も同様の思いだったであろう。
「わたしはウイルス を持っています」とマスクが語っているのだ。

イタリアでは(西洋では?)いかなる時にもマスクを付けない。
医者か劇薬を扱う軍人か。
風邪をひいたからといってマスクを付ける習慣は全くない

彼女を責めるつもりはない。
風邪の菌をまき散らしてはいけない、と思ったのだろう。
しかし、こんな閉鎖的な空間でするのはどうか(外でもヤバイが)。
最近、テレビのニュースで中国のことが報道されている。
誰もがマスクをしている映像が流れてくる。SARSは怖い

無駄な動揺を与えたのではないだろうか。
マスクをしなきゃ、分かんなかったのに。

そんなわたしも最近風邪をひいたので、SARSかと噂されている。
バカバカしいが仕方あるまい。
咳一つできない(さすがに職場ではもうそんなこともないが)。
今日は帰宅途中のトラムの中でどうしても咳がしたくて、
2つ手前の停留所で降りてしまった。でも仕方あるまい。

鼻水もかなり出るが、日本にいる時のようにすすることは決してしない。
すするなんてみっともない。人前でもチーンとかむ。
一枚の分厚いティッシュを何度も使ってかむ。ここはイタリア

日本ではうどんやラーメンを食べる時、
ズズーッと音を立てて食べるのがいい。おいしそうな音だ。
しかしイタリアで長いパスタを食べる時に、決して同じことをしてはならない。
無作法な行為に当たるのだ。
両親がイタリア旅行に初めて来た際、
親子3人でわたしの友人の家庭に食事に招かれて、
わたしが父に言ったことをふと思い出す。
「スパゲッティは音を立てて食べないでよっ」

わたしの住んでいる部屋は日本の家のように土足厳禁にしてあるし、
夜のわたしは日本のドラマをビデオで見たり、ふりかけご飯 を食べたり、
割と日本にいる時と変わらない生活をしている。
日本式を押し通している方だと思う。

しかし、ある程度は「郷に入りては郷に従え」 という言葉を尊重したい。
わたしたちはイタリアに住んでいる(もしくはイタリアを訪れる)外国人である。
イタリア人と共にイタリア文化の中で生きている。
自分の持っている文化は全く別物だから戸惑いもあるかもしれない。
その差異を頭に強く残しつつ、
イタリア文化の中にうまく入っていきたいと思うのである。

(2003年6月)

LARGO ARGENTINA ラルゴ・アルジェンティーナ

正式にはLargo di Torre Argentinaというらしいが、
Largo Argentinaの方がむしろ通じる。ヴェネツィア広場近く。
トラムの8番の始発、終点の停留所がある。

共和制ローマの時代の神殿の遺跡がある広場。
ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が、
ブルートゥスに殺されたところと推定されている。

広場の一角にはサン・ピエトロ広場やナヴォーナ広場、
テルミニ駅など様々な観光スポットにアクセスできる バス停もある。

北側には有名チェーンの大型書店FELTRINELLIがあり、見ているだけでも楽しい。
その向かいにDELFINOというBARがあるが、
ここのSUPPLÌ(スップリー)はなかなか おいしい。
楕円形のライスコロッケのことで、真ん中には モッツァレッラ・チーズが入っている。
90セントなり。

また、FELTRINELLIの東側にはLA CHIAVEというかわいらしい 雑貨屋。
文房具やちょっとしたアクセサリー、
東洋の置物なども置いてあり、イタリアには珍しい店内容である。

さらにVia del Prebiscitoを東に進むと、ミュージアム・ショップがある。
店名は知らないのだが、 大英博物館のグッズや様々な画家のカレンダーなどを置いている。
こちらも覗いてみる価値アリ。

ちなみにトラムの8番は、Largo Argentinaから乗ると、
2つ目の停留所がトラステヴェレ地区の入り口とも 言える
映画館REALEの前であり、更に進むと文部省、
国鉄トラステヴェレ駅を経てCasalettoに至る。

この終点Casalettoから歩いてすぐの所に
Villa Doria Pamphili(ヴィッラ・パンフィーリ)という
ジョギングやサイクリング、凧揚げなどに最適な 巨大公園がある。
春うららかな晴天の日曜日など、 日がな一日、
ここで過ごすのもおすすめである。

LARGOARGENTINA1
一昔前のラルゴ・アルジェンティーナ。

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